今日誕生日の人おめでとう!
どーも作業療法士のジュゴンです。
今年のアカデミー賞は日本のジブリ・ゴジラと2つの作品が受賞して大変賑わいました。
実際に君たちはどう生きるかを見た人の中では、「えっ?」と疑問に思うような描写もたくさんあり、モヤっと映画館を出た人も多いのではないでしょうか。
今回はそのモヤモヤについて言語化していきたいと思います。
家族構成について
小さい頃に母親を亡くした主人公。病院の火事が影響でした。若くして病を患っていたのか、戦争による負傷の影響なのか、看護婦として看病をしていたのかまでは描写がされませんでしたが、宮崎駿のことだからおそらく病気なのでしょう。
その後父親と共に疎開して父親は再婚します。
継母となったのは母親の妹であり、父親の子供であり自分の兄弟を孕っています。
母方の家は非常に広大な敷地を持っており財閥の娘のような印象です。召使いを6人も雇っており、病人も匿うなどの描写もあり、もののけ姫でも石火矢を作る雑賀集がいましたが、そのように金持ちは病人を匿う余裕があるのか、それともそのようにすることで徳を積むことができるのかはわかりません。しかし、使用人はいるものの、本当の家族は誰一人でてこない継母、継母もまた家族を戦争で亡くし、姉を火災で亡くして孤独に生きていた一人なのかもしれません。
元妻の妹と結婚するということについて、戦争中に男性が少なくなっていた時期や、戦争で命を落としてしまう人が多かった時期にはさほど珍しいことではありません。しかし、主人公はなかなか母親として受け入れられず、他者に継母のことを紹介する際には父親の好きな人と呼称します。そして、帰宅する父親に背伸びをして口付けする様子などについても、見なかったように後退りします。
主人公は事あるごとに亡くなった母親のことについてフラッシュバックを起こしています。助けられなかった自分を責めているようです。
時代背景について
サイパンを米国に取られたということから、戦争末期の様子だと考えられます。
サイパンを取られると太平洋を横断する必要性がなく、飛行機で往復飛行できるようになることから、サイパンを奪取されれば、その時点で日本は100%勝てないと言われていました。
しかし、父親は工場で飛行機のコクピット部分のガラスを製造しており、戦争が起これば起こるほど儲けられるという構造に陥っていました。
成金的な性格というのでしょうか、自慢気で勢いがあり自分の思い通りになるように、お金で解決しようとしてしまう。登校初日に車でグラウンドの朝礼台まで乗り付け、学校の帰り道では学徒動員をしている疎開先の子供達に集団で暴行を受けます。父親は犯人は誰だ、仕返ししてやる。学校に文句を言ってくる!学校に多額の寄付をしてきてやった!など自信満々です。
おい!親父!ほとんどお前のせいだぞ!と思いながらも、
そのような勢いのある男に惹かれてしまう。金持ちの世間知らずの女性なのでしょうか。
でも今もトランプ大統領みたいな人に求心力があるのって、自分に自信がある人に対して人は惹きつけられるんでしょうね。
君たちはどう生きるか?の問いに答えはない
今回の題名から一つの解を与えてくれるのだと思い、見に行っていた自分を見つけました。
しかし、それが宮崎駿。何にも教えてくれません。
教えてくれるのは、
正直にいきなさい。ということ。
過去のトラウマから解放されなさい。ということ。
誰かの死体の上に成り立つ安定や富など、崩壊させてもう一度作り直すべきだ。
そのようにメッセージを受け取りました。
鳥の描写と石の描写
天国とも地獄とも言えない世界に主人公がいくと、そこにはたくさんの鳥がいます。
現世にもいた唯一友人になった鳥は青鷺のみで、他の鳥はカタカナの名前の鳥です。セキセイインコとペリカン。
これは何を比喩しているのか。
鳥は空を飛ぶことから天に近い存在としてだと思います。
ペリカンは子供の元であるワラワラを食べてしまいます。子供を現世に運んでくるコウノトリと対比されて描かれていると考えられます。
セキセイインコは学校で飼われていたり、喋る、色が綺麗で鮮やかなどがあり、社会性を持った鳥として日本人以外の海外などの異文化の象徴として描かれている印象です。そのような人々をどのように受け入れていくのかという問いの中で、最後に母親と継母の叔父がその世界の安定を石によって保っていたことを知らされます。
その中で主人公は後継者になるように頼まれますが、断り現実世界で生きていくことを選択します。
様々な私利私欲や奪い合いが蔓延る世の中でも、それらについて屈せずにそしてユートピアの幻想に逃げずに戦い続ける意志を感じました。
そしてその石はおそらく原子力などの強大な力を比喩していたのでしょう。石の崩壊と共に黒い液体があたりに散らばり、その世界は崩壊してしまいます。そしてサイパンを奪われてから1年後に2つの原爆を落とされ、連合国に負けることとなる。
継母の大嫌いの意味
主人公は異世界から現実世界に継母を連れ戻そうとする中で、継母の深層心理に深く入り込み拒絶されます。
しかし、それでも継母の姿に自身の母親と、そしてその時の後悔を乗り越えて助けたいと思うことから、初めて主人公は継母をお母さんと呼びます。
あんたなんか大嫌いよ
は嫌いの意味には含まれません。
子供は大人に対して過度な期待を持ちます。
そしてそれらが満たされないと責任転嫁をしてしまいます。
些細なことで親ガチャとか言ってるやつ、本当に考えろよ。
でも君たちはこの文章もなかなか読めないかもしれません。
些細なことでと前置きしているのに、それらが読めませんし、成長しないと些細なことだと思うことはできません。
大人も完璧ではありません。母親も父親もそうです。
世の中に完璧な人などいません。
だからと言って他の人に交換することはできません。
そして完璧ではないけれど、いいところはたくさんあります。
母親だって、父親だって、一人の人間であり辛い時もある。
それらを表現した嫌いです。
決して主人公を本当に嫌いなのではなく、継母のSOSだと感じます。
本当に母親になれるのか、姉の元夫と結婚してもいいのか、怪我をさせてしまったのは自分の監督責任ではないのか。そんなたくさんの不安があなたに起こるように、継母にも起こって当然です。
相手目線になり抱きしめてあげることが、本当の意味で自分自身を愛すことにつながると感じます。
まとめ
今回は君たちはどう生きるかについて考察していきました。
ジブリは昔に比べて対象者が大人向けになってきていますが、今回の作品は既視感の多い作品でした。もののけ姫の可愛いキャラクター、千と千尋の可愛いキャラクター、ポニョの可愛いキャラクターなどによく似た作品もありながら、やはり題材は風立ちぬに近い戦争です。
宮崎駿監督が自分の人生を通して作ってきたエピソードを統合させていく様子が見れます。
答えを探しにいくのではなく、自分とつながりに行くために映画館に足を運んでみてください。